1920年、エンリケ・デルフィーノ作曲。サムエル・リンニグ作詞。
デルフィーノはピアノの名手であり、オペラを好み音楽理論にも精通した才人で、1920年代の高踏的な「タンゴ・ロマンサ」の時代を牽引した一人です。
この曲は当初はサイネーテ(大衆演劇)の中で歌われ、やがてスペインから来た著名な歌手ラケル・メレが取り上げたことでヨーロッパでも知られるようになりました。
古いタンゴながら、美しいメロディと、一見華やかな夜の世界で転落していく娘の孤独を描いた、悲しい歌詞が印象的な名曲です。
可憐な女の子だったエステルは今や「ミロンギータ(キャバレーの娘)」とあだ名されている。
彼女は深い孤独を感じており、明け方キャバレーを出る時には彼女の魂は寒さで震えている。
彼女が泣いていても人はシャンパンの飲みすぎだという…という内容です。
〈覚えているかい、ミロンギータ?
君はチクラナの街で一番美しい女の子だった
短いスカートと三つ編み、三つ編みには太陽のキス
君はいまやミロンギータと呼ばれている
贅沢と享楽の花
酒とタンゴ
しかし男共は君にひどい仕打ちをした
そして今日、君は更紗のドレスを着るのに全身全霊を捧げるだろう〉