1969年、アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)作曲、オラシオ・フェレール(Horacio Ferrer)作詞。
1968年の小オペラ「ブエノスアイレスのマリア」以来、ピアソラと詩人フェレールは共同で優れたタンゴ歌曲をいくつも生み出しました。
とりわけこの「ロコ」はシュールレアリズム的で難解な歌詞ながら、その中で最大のヒットとなった作品です。
1969年に開催されたブエノスアイレス歌謡フェスティバルで2位を獲得しましたが、1位を取った曲「最終列車まで」があまりぱっとしなかったこともあってか、それに納得しない群衆が乱闘騒ぎを巻き起こすなど大きな議論を呼びました。
当時の聴衆の「ロコ」への熱狂はめざましく、ピアソラの作品の中でも異例の大ヒットとなり、アルゼンチンはもちろん南米各国にその人気が広がっていった、まさに「新時代のタンゴ」といえる記念碑的な作品です。
ロコ(Loco)とは狂人の意味ですが、スペイン語では「すばらしい」「夢中になっている」など肯定的な意味でもとられます。
そしてフェレールの幻想的な詩の中の「ロコ」はあまりにも超現実的な存在。
頭にメロンをかぶり、裸にシャツの模様を書き、手にはタクシーの旗を持った珍妙な姿で、「さあおいで、踊ろう!飛ぼう!」と高らかに歌い上げる彼は、愛と自由の象徴なのかもしれません。
ピアソラの没後、盟友オラシオ・フェレールは『ピアソラの音楽は「カフェの音楽」「場末の芸術」でありながらも、普遍的でクラシックな芸術である』と語りました。
この芸術性と大衆性の絶妙なバランス感覚が、今も世界中でピアソラ作品が聞かれている大きな理由なのでしょう。
※ちなみにこの作品の冒頭は3拍子のリズムですが、ピアソラは意外なことに3拍子の曲は「チキリン・デ・バチン」「4分の3拍子で」など、この曲を含めても数えるほどしか残していません。
※タンゴ・グレリオでは歌手との共演で演奏しています。

